カレンデュラ(Calendula officinalis)|ベランダでも育つハーブ図鑑
鮮やかなオレンジ色の花を咲かせる「カレンデュラ(ポットマリーゴールド)」。
見た目の華やかさだけでなく、古くから薬草や料理、スキンケアにも使われてきた万能ハーブです。
ベランダ栽培でも比較的簡単に育てられるので、初心者にもおすすめ。
この記事では、カレンデュラの効能・代表的な成分と香り・歴史にまつわる逸話、そして“マリーゴールド(Tagetes)との違い”を正しく整理。さらに育て方と超簡単レシピまでまとめてご紹介します。
カレンデュラとは?
カレンデュラ(別名:ポットマリーゴールド)は、キク科に属する一年草。
明るい花を長期間咲かせることから「太陽のハーブ」とも呼ばれ、ヨーロッパを中心に古くから薬用・食用・観賞用として親しまれてきました。
地中海域を中心に栽培され、皮膚や粘膜を修復しお肌を保護する作用に優れているため、「皮膚のガードマン」とも呼ばれています。近年ハンドメイドでチンキやハンドクリームを作る方も増えています。
英名 Pot Marigold (ポットマリーゴールド)という通称から混同されがちですが、後述のマリーゴールド(Tagetes属)とは別植物です。
カレンデュラの効能と特徴
カレンデュラは「肌のハーブ」として有名で、さまざまな効能が知られています。
プロフィール
| 学名 | Calendula officinalis L. |
| 英名 | Calendula |
| 分類 | キク科キンセンカ属 |
| 別名(和名) | ポットマリーゴールド・唐金盞花・金盞花 |
| 種類 | 一年草(条件により越年・短命多年化あり) |
| 草丈 | 10~60cm |
| 原産地 | 地中海沿岸原産 |
| 有効成分 | カロテノイド、カレンデュリン、フラボノイド、ステロール、サポニン、トリテルペノイド、ルティン |
| 利用部位 | 花 |
効能
- 皮膚の修復作用:やけど、切り傷、湿疹、オムツかぶれ、ニキビなどに。伝統的に軽度の皮膚炎・日焼け・小さな切り傷の回復補助として利用されています。ヨーロッパでは「伝統的使用に基づく外用」のハーブ製剤として評価しています。
- 抗炎症作用:内服で胃炎などの消化器系の炎症や痛みをやわらげ、口腔・咽喉ケア・うがいなどで喉の炎症の緩和に用いられてきました。
- 免疫サポート:花に多いトリテルペン(ファラディオール脂肪酸エステル)抗酸化成分が体を守る働きをしています。風邪予防やインフルエンザなどのウイルスに抵抗力を高めてくれる働きも。
- 女性の健康サポート:女性ホルモン(エストロゲン)様作用があると考えられているフィトステロールが成分に含まれており、伝統的に月経不順や更年期障害、生理痛の緩和に用いられてきました。
代表的な成分と「香り・色」との対応
お肌の万能薬と言われるカレンデュラの“効能”と“香り・色”は、この成分群が担っています。
- カロテノイド(ルテイン/β-カロテン)
→ 鮮やかな花色の主因。抗酸化で肌・粘膜を守るはたらき。 - フラボノイド
→ 抗酸化・抗炎症を通じて鎮静サポート。 - トリテルペノイド(ファラディオール など)
→ 抗炎症の中心的役割。外用製剤の有効成分群。 - 揮発性成分(精油):α-cadinol/δ-cadinene/α-muurolol などのセスキテルペンが主体の穏やかなハーバル香。
→ 甘さ控えめ・樹脂質でウッディなニュアンスはセスキテルペンアルコール類に由来。 - ルテイン
→ 目に良いサプリとして有名なルテイン。ブルーライトや紫外線から目を保護してくれます。また、加齢に伴う目のかすみも改善効果が期待。
安全性・注意
●キク科アレルギーのある方は使用を控えてくださいね。パッチテストを推奨しています。
●妊娠・授乳中はデータ不足のため使用を推奨しません(外用に反対の根拠はありませんが、原則は医療者に相談)。
●食用は自家栽培の無農薬株を用い、花弁のみを使用。白い付け根は苦いので除くのがおすすめ。
「カレンデュラ=ポットマリーゴールド」と「マリーゴールド(Tagetes)」の違い
結論:別植物です。 俗名が似ているだけで、属が違います。
| 比較軸 | カレンデュラ | マリーゴールド(一般) |
|---|---|---|
| 学名/属 | Calendula officinalis(Calendula属) | Tagetes spp.(Tagetes属。例:T. erecta・T. patula・T. tenuifolia) |
| 原産 | 旧世界(地中海域中心) | メキシコ~中米など新世界起源 |
| 葉 | 単葉でややベタつく | 羽状に深裂/強い芳香 |
| 香り | 穏やかなハーブ香 | 品種により強い香り(スパイシー~レモン様) |
| 食用 | 花びらは広く食用 | 食用可とされるのは一部(主にシグネット=T. tenuifolia など)。他は苦味・意見分かれる |
| 用途 | 外用スキンケア・食用彩り | 伴生栽培・観賞・一部食用(限定的) |
ポイント
Pot Marigold」=Calendulaの別名。Tagetesとは違う。
食用として確実なのはカレンデュラ(花びら)。Tagetesはシグネット系(T. tenuifolia)など限定的に食用可という扱いが多く、一括して“マリーゴールドは食べられる”とは言えない。
お花屋さんで苗を購入する時はラベルを良く見てCalendula officinalisと学名が書いてあるかをチェックしましょう。

カレンデュラの面白い逸話
貧者のサフラン
高価なサフランの代わりに料理や染料として利用されました。スープやチーズ、マヨネーズに色付けする習慣もあり、今でも使える便利な代用品です。
魔除けのお守り
玄関に吊るすと悪霊や不運を避けると信じられていたそう。儀式中、場の保護のために、お香やオイルが使われたりも。
文学にも登場
シェイクスピアの詩に「マリーゴールドは太陽に顔を向ける」と描かれ、太陽の象徴とされたそう。
カレンダーの語源
ラテン語のKalendae(月の最初の日)に由来しています。
花言葉
太陽のハーブなんていうポジティブな異名を持ちながら、花言葉は「別れの悲しみ」「寂しさ」「悲嘆」「失望」とネガティブな物が並んでいます(苦笑)
オレンジ色=「別れの悲しみ」「寂しさ」「悲嘆」「失望」
ギリシャ神話で太陽神アポロンに恋焦がれた少年の悲恋が元になったという花言葉だそうです。
一方で
黄色=「献身」「慈愛」「乙女の姿」「変わらぬ愛」
キリスト教の時代になると聖母マリアの花としてポジティブな意味を持つようになりました。太陽に向かって咲く黄金の花のイメージでしょうか。
西洋では悲喜こもごもですが、東洋では若い医者が花の精のお告げに従って見つけた金色の花で疫病を収束させ、その評判は皇帝に伝わり、侍医へと出世し、幸せに暮らしました。このことから「立身出世」の意味を持つ花となっています。
私はこの花言葉が好きです(笑)
簡単レシピ
エディブルフラワーとしてサラダやデザートなどの色どりにも鮮やかさを演出してくれます。キク科なので、食用菊の感覚で使えますね。
カレンデュラのハーブバター
食卓を華やかに彩る一品。パンや魚料理におすすめです。
材料(作りやすい分量)
- 無塩バター:100g
- カレンデュラの花びら(乾燥or生):大さじ2
- 塩:少々
- レモン汁:小さじ1
作り方
- 室温に戻したバターをボウルで柔らかく練る
- 刻んだ花びら・塩・レモン汁を加えてよく混ぜる
- ラップで棒状に包み、冷蔵庫で冷やし固める
👉 パン/蒸し野菜/魚の仕上げに。見た目も鮮やかで、料理に華やかさをプラスできます。
カレンデュラティー(花茶)
カレンデュラを一番手軽に楽しめるのがハーブティーです。鮮やかな色合いとやさしい風味が楽しめます。
材料(1杯分)
- 乾燥カレンデュラの花びら:ティースプーン山盛り1杯
- 熱湯:200ml
- はちみつ(お好みで):小さじ1
作り方
- ティーポットまたは耐熱カップにカレンデュラの花びらを入れる
- 熱湯を注ぎ、フタをして5〜7分蒸らす
- 茶こしでこしてカップに注ぎ、お好みではちみつを加えて完成

やさしい黄金色のお茶になり、気分をリラックスさせてくれます。
レモンを少し加えると爽やかさがアップしておすすめ。
☆妊娠中の方やキク科のアレルギーのある方は食べないようにしてくださいね。
カレンデュラの育て方
種まき:春(3–5月)/秋(9–10月)。直まき or セルトレイ。
日当たり:日当たり大好き。日向がベスト。深い日陰は徒長したり花つき低下します。天気の悪い日は花が閉じてしまう事も。
用土:水はけ良い培養土。市販の草花用培養土でOK 。過湿&過肥はNG(徒長・花減少)。弱アルカリ性の土を好むため、ご自宅の再生土を使う場合は苗を植える2週間前までに苦土石灰を撒いてPHを調整しましょう。
肥料:市販の培養土を使用する場合は元肥は不要です。苗が育ち始めたら10日に1回液体肥料を与えます。または月に1度を目安に緩効性化成肥料を与えます。窒素が多い肥料は花付きが悪くなる為リン酸やカリウムが多めの肥料をあげましょう。
鉢サイズ:深さ20cm前後でOK。根詰まり回避に株間20–30cm。育苗ポットに種を撒いて本葉4~5枚になったら鉢に植え付けます。(直播もOKです)
水やり:表土が乾いたらたっぷり。梅雨どきは風通しを。
管理:花がら摘みを行う事で子孫を残そうと連続開花します。脇芽を伸ばす摘芯で株を締める。
病害虫:比較的強いが、アブラムシとヨトウムシは監視が必要。早期に物理除去 (テデトール)。うどん粉病、炭疽病など、加湿が天敵。風通し、水捌けを良くしましょう。
収穫:晴天午前中に満開直前の花を摘み、ザルで陰干し→乾燥花びらを料理・浸出油に。基本的には咲き終わる前に収穫しますが、来年の種を取る場合は最後に数本残して、種を採取しましょう。乾燥させたら密閉袋に入れて涼しい場所で保管しましょう。
寒さには結構強いですが、霜には当たらないようにしてあげてくださいね。夏の暑さには弱く、夏には枯れてしまいますので、一年草として考えます。
まとめ
カレンデュラは「見て楽しむ」「食べて楽しむ」「薬草として役立つ」万能ハーブ。
ベランダでも簡単に育てられるので、初めてのハーブ栽培にもぴったりです。
🌿 花を楽しみながら、ハーブクラフトや料理に活用してみてはいかがでしょうか?
:引用・参考文献:
Kew POWO: Calendula officinalis(学名・分布・分類) Powo
RHS: Calendula(育て方・可食の記述)/Edible flowersガイドライン RHS+1
EMA HMPC(2018 Assessment Report:外用の位置づけ・妊娠授乳の方針) European Medicines Agency (EMA)
研究:
・1994:ファラディオール含量と抗炎症活性の相関(品質指標として有用) PubMed
・2025:C16-水酸化トリテルペンが抗炎症の主因であることを最新に再確認(IL-6調節) Nature
