鷹の爪(唐辛子)の育て方|ベランダ菜園で収穫するコツ【他品種にも応用OK】
ベランダや小さなプランターでも簡単に育てられる「鷹の爪(唐辛子)」。辛味のスパイスとして料理に欠かせない存在で、乾燥保存すれば一年中使えます。なお、この記事の内容は「インドジンウソツカナイ」をはじめ、ハバネロやプリッキーヌなど他の唐辛子全般にも応用可能。家庭菜園向けに、わかりやすく育て方・収穫・保存方法をまとめました。
鷹の爪とは?唐辛子の仲間たち
鷹の爪(Capsicum annuum var. annuum)は、日本で最もポピュラーな唐辛子の一種。爪のように細長い形と強い辛味が特徴で、乾燥させて調味料や薬味として長く利用できます。
唐辛子の辛さは「カプサイシン」という成分によるもので、血行促進や食欲増進、発汗作用が期待できます。ただし摂りすぎると胃腸に負担をかけるため、使い方には注意が必要です。効能についての詳しい解説は別記事の「ハーブ図鑑」に譲りますが、栽培して自家製唐辛子を料理に取り入れるだけでも、日々の食卓がぐっと豊かになります。
唐辛子には多くの品種があり、いくつか代表的なものを紹介します。
- 鷹の爪(日本の代表品種):強い辛味で乾燥保存に最適。和食・洋食どちらにも幅広く使える。
- インドジンウソツカナイ:ユニークな名前で人気の中辛品種。実が多くつき、初心者にも育てやすい。
- ハバネロ:世界的に有名な激辛唐辛子。観賞用としても映えるが、栽培には高温が必要。
- プリッキーヌ(タイ唐辛子):小さいながら強烈な辛さを持ち、タイ料理に欠かせない存在。
- シシトウ:辛味の少ない唐辛子の仲間。焼き物や天ぷらなど、日常的な料理に使いやすい。
👉 どの品種も基本的な育て方は共通しています。鷹の爪をベースに覚えておけば、他の唐辛子栽培にも応用可能です。
唐辛子の育て方(ベランダ・プランター向け)
種まき・苗選び
唐辛子の種まきは春、3〜5月頃が適期です。発芽温度は25〜30℃とやや高めなので、まだ気温が低い場合は室内で保温しながら発芽させましょう。
2月からでも種蒔きは出来ますが、芽出しを行なった後、セルトレイなどに撒いて、保温しながら育苗させましょう。
唐辛子の発芽適温は25〜30℃と高めで、やや気難しい一面があります。そこでおすすめなのが「芽出し(発芽促進)」です。湿らせたキッチンペーパーに種を包み、ビニール袋や蓋つきタッパーなどに入れて暖かい場所に置いて、種子が浸る程度の水を毎日交換し、酸素を供給します。

数日〜1週間ほどで白い芽が出始めます。その後、根を傷つけないよう注意して土にまけば、発芽率がぐんと上がります。

初心者の方には、園芸店で販売されている苗から育てるのがおすすめです。5月〜6月頃に出回る苗を購入すれば、そのままプランターに植え付けて育てられます。
苗を選ぶ時は茎が太く、葉色が濃く、葉っぱと葉っぱの間の節間が狭い(徒長していない)苗を選びましょう。そして出来ればすでに1番花が付いている物が良いです。本葉が8枚以上あればすぐに植え付けられる目安です。
買う時期が早く花が咲いていない場合は、なるべく良い苗を選び購入し、少し大きめのポットに(販売時は9号ポットが多いので、一回り大きなポットに)仮植えし、定植するまで大きくします。
プランターと土づくり
プランターは深さ30cm以上あるものを選びましょう。唐辛子は根が浅い植物ですが、横に広く根を張るため、プランターは深さ30cm以上あると安定して育ちます。

根が浅くて横に広く根を張るなら浅いプランターでも良いのでは?
「唐辛子は根が浅い」と言われるのは事実ですが、これは「根が浅い=根を張らない」という意味ではありません。
唐辛子の根の特徴
- 主根(まっすぐ下に伸びる根)は比較的短い
- その代わりに側根(横に広がる根)がたくさん伸びる
- 土の表層〜20cmくらいに集中して根を張る傾向がある
プランターの深さが必要な理由
- 浅すぎる(20cm以下)の容器だと根が広がりきらず、水切れや倒伏の原因になる
- 深さ30cm前後あると、根が横方向+やや下方向に安定して張れる
- 容量が大きいと土が乾きにくくなり、根が安定して養分を吸収できる
- 唐辛子育成には支柱が不可欠なため、確りとした支柱を立てるにはプランターの深さがある程度必要。
唐辛子は「根が浅い」植物だけれど、根を広く張るスペースは必要。
だから、プランターの深さは「根の深さに合わせる」というよりも、根全体を安定させる“土の余裕”を確保するために30cm以上を推奨しています。
土は市販の野菜用培養土で十分。できれば排水性が良いものを選んでください。酸度調整のために苦土石灰を少量混ぜておくとより安心です。肥料はあらかじめ元肥を混ぜておきましょう。
植え付け
株間は横長プランター植えで複数本栽培の場合、25㎝以上は確保しましょう。唐辛子は根が横に広がるため、間隔が狭すぎると養分や水分、枝葉が重なって日光の奪い合いになり、生育が弱くなります。出来れば30cm以上空けると風通しも良くなり、病害虫の予防にもつながります。
丸形プランターや鉢の場合は1鉢に1本が基本です。小さな鉢に複数植えると根が絡み合って成長が阻害されるので、必ず1鉢1株を目安にします。特に唐辛子は実をたくさんつけるので、1本あたりの根のスペースを十分に確保してあげましょう。
定植のコツ
苗を植えるときは、土を深く掘りすぎず、浅植えにしましょう。ポットの土の表面がプランターの土の面より少しだけ出てる位が良いでしょう。ポットの土ごと優しく取り出し、根鉢を崩さずに植え付けます。植え付け後は株元を軽く押さえて根と土を密着させ、たっぷり水を与えるのがポイントです。
支柱
無事植え付けたら、苗のそばに支柱を立てて、緩く麻紐などで固定しましょう。トウガラシは枝葉を横に伸ばし、たくさんの実をつけ、また根が浅い為、強風などで煽られると支柱がなければ倒れたり折れてしまうことがあります。
水やり・肥料管理
唐辛子は乾燥気味を好みます。土の表面が乾いたらたっぷり与える「メリハリある水やり」がコツです。水を与えすぎると根腐れや病気の原因になるので注意しましょう。
特に近年は猛暑の為、1日2回、必ず朝夕の涼しい時間帯に水を与えましょう。乾燥にはある程度耐性は有りますが、水が切れたらやはり枯れます。ただ、萎れている内なら水をやれば大体復活しますので発見時萎れているからと諦めず、お水をあげてみましょう。
肥料は実がつき始めたら10日に1回程度、液体肥料を与えると収穫量が安定します。葉が黄色くなってきたら肥料不足のサインです。次々と花を咲かせて身を成らせるので、株の体力を持続する為にも肥料切れを起こさないようにしましょう。また、リン酸多めの肥料をあげると実付きがよくなります。
病害虫対策
唐辛子に多い害虫はアブラムシ、ハダニ、カメムシなどです。風通しを良くすることが予防の第一歩。葉裏をこまめにチェックして、見つけ次第取り除きましょう。
アブラムシやハダニはほぼ確実につくので、定期的に葉水を葉裏までしっかりと虫を洗い流すイメージで掛けてあげましょう。カメムシは小さい内にテデトール(捕殺)し、卵が生みつけられていないかチェックしましょう。
家庭菜園では、ニームスプレーや木酢液などの自然由来の対策がおすすめ。唐辛子は食用なので、既製品の農薬を使う場合も「食用野菜に使える」ものを必ず選んでください。
私も自作の自然農薬を作っている暇が無かったりなど、どうしても既製品に頼らざるを得ない時には天然成分から作られたオーガニック系の薬品を使用しています。
ただし、化学成分で作られた農薬に比べて効き目はマイルドですので、1回で効果が出ない事も有ります。大量発生前に見つけて対策を心掛けましょう。
狭小ベランダ菜園やプランター菜園など、範囲の狭い家庭菜園なら希釈せず手軽に使えるスプレータイプがオススメです。
整枝
唐辛子は植え付け後そのまま育てても実はつきますが、整枝(枝を整理する作業)をすると風通しが良くなり、株の負担も減って収穫量アップにつながります。
苗を植えて草丈が30cm前後になった頃に、1番花(最初の花)が咲いた位置が分岐点になるので、ここを目安に整枝を始めます。
3本仕立てや4本仕立てや
整枝のやり方
- 1番花の下のわき芽を摘む
1番花が咲いたら花より下の株元に近いわき芽は、主枝の成長を妨げるため早めに取り除きます。(3本仕立てにする場合は1番花のすぐ下の2つの脇芽は残します。) - 残した枝を支柱で支える
倒れないように主枝、側枝を支柱で支えます。 - 混み合う枝を整理する
内側に向かって伸びた枝や、重なり合って日当たりを遮る枝はカットして風通しを良くします。 - 残す枝は3〜4本を目安に
どんどん枝分かれしていくので、主枝+分岐した枝のうち、元気な枝を選んで残し、バランスを整えます。
整枝のポイント
- 1番花を目印に株の形を整えると分かりやすい
- 株元の不要な枝を取るだけでも病害虫予防に効果的
- 無理に切りすぎず「すっきり風通しよく」を心がける
収穫と保存方法
収穫の目安
唐辛子は緑の状態でも収穫できますが、赤く完熟した方が辛味が増して保存性も高まります。鮮やかに色づいたら収穫のタイミングです。
青唐辛子として利用する場合は、早めに摘み取れば爽やかな辛味を楽しめます。
保存方法
収穫した唐辛子は風通しの良い場所で乾燥させましょう。網やザルに並べて陰干しするとカビが出にくくなります。完全に乾燥したら瓶に保存すれば1年以上利用可能です。振ってカラカラ中の種の音がする位になれば完璧です。
冷凍保存も便利で、ヘタを取ってそのまま冷凍庫へ。料理に使うときは凍ったまま切れば手も辛味で痛くなりにくいです。
さらに、唐辛子をオリーブオイルに漬け込んで「チリオイル」にしたり、酢に漬けて「唐辛子酢」にしたりするのもおすすめ。保存と同時に調味料として活用できます。
収穫した唐辛子は風通しの良い場所で乾燥させましょう。
🌿 手軽に使える吊り下げ式乾燥ネット
🌶️ 乾燥後は瓶に入れて保存すると便利です
唐辛子の活用レシピ
鷹の爪の定番
ペペロンチーノ:にんにくと一緒にオリーブオイルで炒めるだけで本格的な味に。
唐辛子味噌:刻んだ唐辛子を味噌に混ぜて保存。ご飯や野菜につけるだけで美味。
鍋料理の薬味:乾燥鷹の爪をそのままちぎって加えると風味が引き立ちます。
他の唐辛子の活用
- ハバネロ:ホットソースやカレーに。少量で強烈な辛味を演出。
- プリッキーヌ:ガパオライスやトムヤムクンなど、タイ料理に欠かせない。
- シシトウ:焼き物や天ぷらで、ほろ苦さと香りを楽しめる。
家庭菜園で育てた唐辛子は、乾燥・冷凍・調味料と幅広く使えるので、余すところなく楽しめます。
まとめ
- 鷹の爪はベランダでも簡単に育てられる
- 育て方の基本は他の唐辛子にも応用可能
- 害虫対策や水やりのコツを押さえれば収穫量が安定
- 保存方法を工夫すれば一年中楽しめる
- 自家製唐辛子で料理の幅が広がり、食卓がもっと楽しくなる

家庭菜園の一鉢から、自家製のスパイスが収穫できる喜びは格別です。鷹の爪をきっかけに、インドジンウソツカナイやハバネロなど、いろいろな唐辛子に挑戦してみてください。また、ピーマンも同じように栽培できますので、応用できますね。

